屋 久 島 病 の 日 々
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私のシャクナゲ登山1
2001年6月11日(月) 雨
やっぱり今日も雨だった。島全体が巨大な雨しずくにすっぽり覆われているか
のようだ。泳ぐように、島内を移動する。
昨夜から生理が始まった。やれやれ。何だか眠いと思ってはいたのだが、ちと
早い。でも、明日には帰るので、今日登らないわけにはいかない。あまり気にし
ないことにする。
午前7時に朝食。焼き魚や温かい味噌汁に体が目覚めてくる。この宿は自家
製の有機野菜を食材に使っているそうで、味覚に疎い私でも、味の生きの良
さに元気が出てくる。食事というのはつくづく大事なものだと思う。自分の普段の
食生活を振り返ってちょっと反省。
8時に宿を出て車で淀川登山口へ向かった。到着してカッパを着込んでリュッ
クを背負い、更に上からポンチョを被ろうとしたところでちょうど2人組の女の子
たちが来たので、背中側のポンチョを引き下ろしてもらった。…が、きつい。リュ
ックが大きいので、ポンチョがつかえて下までおりないのだ。
「ちょっと無理みたい…」
と言われて素直に同意。ポンチョは車の中に置いて出発した。とほほ。
今年は10年に一度のシャクナゲ当たり年と言われている。そんなこととはつゆ
知らず、ただヤクシマシャクナゲが咲く風景を見たい気持ちだけでこの旅を計画
した。考えてみると幸運なのかもしれない。昨年夏、屋久島を訪ねなければ、き
っとこの旅もなかったのだろう。
登山口から40分ほど歩き、淀川小屋に荷物を置いて、軽装で出かける。丸太
小屋風の山小屋は、周囲の景色にあまり違和感なく建っている。中はフロア
が2段ベッド風に上下に分かれていて、2階の奥の方では誰かが寝ていた。こ
の雨で朝寝を決めこんでいるのだろう。
シャクナゲ前線は、時が経つにつれ上に移動していく。標高が高いほど見頃
なのだろうが、屋久島最高峰の宮之浦岳付近まではとてもたどり着けそうにない。
果たしてどこまで行けるだろうか? せめて、途中の投石平(なげいしだいら)ま
では行きたい。
きのう、ガイドをする友人からもらったアドバイスも
「投石平までは意地でも行こう」
だった。反芻しながら、歩き始める。
雨は降り続いている。でも、楽しい。泣きそうに、楽しい。理由は分からないし、
考えない。ただ、楽しいと思う気持ちを自分の真ん中にすえて、歩く。「楽しい」
気持ちは、足取りを軽くする。「楽しい」はすごい。
2時間半ほど歩いて投石平に着いた。カッパの中はサウナ状態だったが、
気にする暇もなく、開けた光景に目を奪われた。
シャクナゲの花々がもやに浮かび、幻想的な雰囲気が漂う。緑の山肌の上
何ヶ所にも渡って盛られるように咲いている。イチゴとバニラのシャーベット
のような色合いの花々が目に優しい。
ふと頭に浮かんだ言葉は『極楽浄土』だった。静謐で、世俗から遠く離れた
世界。自然は、なんと完璧なのだろう。
投石平に引き止められて、景色を眺めていたら、あっという間に1時間半ほど
経っていた。もう引き返した方がいい時間だった。満足したからよしとして、
小屋への帰路についた。



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