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甘露               11月21日(土)小雨 

 相変わらずの一夜漬け的荷作りの為、あまり物事を考えることなく、た
だ足を進めていく。夜明けまで降っていた雨が蒸し暑さを連れてきて、荷
物を持って歩くと、11月というのに汗が出る。

 着ていたフリースを腰に巻いて、最寄り駅から電車に乗り、モノレール
に乗り換えて大阪国際空港へ。チャッカマン没収の他は滞りなく通過。検
査官の
「チャッカマン入ってますか?」
という物言いが、場にそぐわない気がして、こっそり笑えた。

 鹿児島空港でYS-11に乗り継ぐ為、滑走エリアを歩く。霧島下ろし(?)
の風が冷たい。反応して、心がコトッと浮き上がる。蒸気で浮き上がる鍋
の蓋みたいに。
 
 到着前に一度旋回したものの、YSは引き返すことなく無事降り立って
くれた。夏以来の屋久島。
 
 タラップに足を踏み出すと、雨に混じってあの風が吹いてくる。甘やか
で、濃厚な、島の匂いを含んだ風。

 頭に垂れ込めていた重たい霧が、押し流されていく。

 雨の為、変てこに暑かった大阪よりはひんやりするが、フリースはいら
ない。仕事に行ってしまった友人の事務所で、ひとりぼんやり過ごす。留
守番と言いたいところだが、全く役には立たない。お土産の三岳を送るこ
と以外、用事もない。


 何かのごほうびのように、甘い雨、降りそそぐ。
 この島に、甘露、降りそそぐ。

 
 ひとしきりぼんやりした後は、レンタカーの配車をちょっと手伝ったり、デ
ジカメのCFを買い求めてさまよったりしているうちに、日が暮れた。雨も
上がった。

 夜は、ゆかりちゃん、まなみちゃんと、バレーボールワールドカップを観
ながらお鍋をつつく。野菜たっぷり、豚肉これでもかのしゃぶしゃぶに、
初物のボジョレーヌーボーも開けて、たらふくごちそうになった。(夜はお
菓子ですませてしまうこともあるまなみちゃんは、あとで気分が悪くなって
大変だったようだ。)

 夏以来の屋久島行きは、こうして穏やかに始まった。
 まるで日常のように。
 
県道に咲く、ポインセチア。





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