屋 久 島 病 の 日 々
随時更新
ふかふかの上(2)
2002年4月21日(日)雨のち晴れ
(前回の続きです)
・・・雁(:かり、犬の名です)も一緒に、にわか撮影会となった。Kさんもカメラを
取り出してきて写真に収めている。
サルスベリの木は悠然と私たちを見守っていた。・・・
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サルスベリの大木に別れを告げて、更に登っていく。少しずつ頭上が
明るくなり、ところどころ視界が開けてくるにつれ、ヤクタネゴヨウも見ら
れるようになってきた。ちなみに、ゴヨウマツの名は、「五葉松」の字のご
とく、とがった葉っぱがひととこから(2本ではなく)5本生えているところか
らくる。
「太陽が大好きなんだけれど成長が遅くて、ほかの植物に負けてしま
う。だからある程度まで育っているヤクタネゴヨウは、競争率の低い、
吹きっさらしの急斜面に生えていることが多いんです。でも、幸運にも育て
ば大木になることもあります」
何だか涙が出そうになった。
太陽が大好き・でも成長が遅い・厳しい環境・大木にもなれる可能性。
そんな言葉が頭の中をぐるぐる回る。ただ回るにまかせつつ歩く。
油分を多く含むこの木は材木としても価値が高い。かつてヤクタネゴヨウ
で作られた丸木舟は60〜70年の使用に耐えたという。
戦後の過伐、マツノザイセンチュウ(線虫)、強い風…。種(しゅ)を追い
やる条件には事欠かない。
大きめのヤクタネゴヨウが目立ちはじめた。やはり風雨にさらされるような
場所にどしりと立ち、空に向かって枝葉を広げている。
「向こうの山の稜線にもまとまって立っています」
とKさんが指さした先では、シルエットのようになって山の斜面から
ギザギザと飛び出していた。
他にも周りにはたくさんの草花木。ふだんひとりで歩くことが多い私は、
この時とばかりにKさんに質問しまくっていた。またふだんから物覚えの悪い
私は、同じ質問を何回も繰り返してもいた。そのたび丁寧に答えてくれる
優しくて辛抱強いKさんであった。
ヘツカリンドウ、ヒトツバ、マメヅタ、バクチノキ、シャンシャンボ…。
花を咲かせているのはマメヅタラン、ハイノキ、エゴノキ…。だが、今
こうやって書いていても、どんなだったかなかなか思い出せない。
植物の本と照らし合わせて「ああそうだった」と思うのもあれば、
「こんなのあったっけ?」と思うのもある。いやはや、申し訳ない。
そのくせ
「なんでこんなに幹が波打ってるんでしょう?」とか、
「なんで木がつながってしまったんでしょう?」などと、
疑問だけは尽きないのであった。
下る途中再びサルスベリの大木の横を通った。大きな木に出会うと
いつも思うことがある。
日常の生活に戻っても、いつか会った木が、今このときもその場所に
静かに立っていると思い浮かべられるなら、それは心の間口を広げ、
ゆとりや潤いをもたらす気がする。
考えてみれば何も別に大木に限ったことではなく、今まで出会ってきた
多くのものごとに共通する。
だから私はいろいろなものにじかに「ふれたい」と思うのだろうか。
下山した頃にはすっかり晴れていた。久々の直射日光がまぶしい。
帰りに、新しくオープンした、コテージが並ぶホテルを冷やかしたり、
Kさんの知り合いのお宅に寄ったりした。
このお宅は半自給自足で生活なさっているようで、庭で鶏を飼い、
温室で野菜や果物を栽培されていた。
小学生くらいの女の子が、突然の訪問者にちょっとはにかみながら、
外のかまどに火を入れている。妹とおぼしき女の子の方が活発に話し
かけてくる。お茶をいただきながら、しばし休息。
その後温室に、ご主人を訪ねた。パッションフルーツの花(時計草)を
見せてもらった。本当に花の真ん中が時計の針のようだった。
向こうから犬を連れた女性が歩いてきた。が、こちらの雁を見つけて、
進もうかどうか迷っている風であった。
近所の顔見知りの方のようで、ご主人が手招きすると、そのまま歩いて
私たちと合流。
女性の連れている犬と雁とは色(黒)といい、体型といい、よく似ていた。
雁は甲斐犬で、その女性の犬は屋久島犬の血を引くということだが、2匹
揃うと妙にほほえましい。
自ずと犬の話になり、最近、つないでいる飼い犬が、何気なく出した人間
の手を噛む事故が続いているという話などを聞いた。
Kさん宅に一旦戻った。ガイドの仕事が入っていた妻のkさんや会社のYくん
も戻ってきていた。
雁の訓練を見せてもらった。
家のどこかで誰かがひとりうずくまるようにして隠れる。
「さがして」の声かけとともに隠れた人を捜し、見つけたらワンワンとほえる
…というものであった。
例えば100人ひとがいたとしても、においの違いをかぎ分けられるし、
あらかじめ捜す人のにおいをかいでおく必要もないらしい。とにかく、その場に
いなくて、寝そべったり、うずくまったりしている人を捜し当てる訓練のようだ。
みんなでかわるがわるいろんな所に隠れるが、難なく見つかってしまう。
私も2階の布団部屋の布団の中に隠れたが、ワンワンとやられ、布団をはが
されてしまった。見つけられるまでけっこうどきどきして、もうこれは遊んでもら
っている図だと思うと、隠れている間可笑しかった。
見つけるたんびにみんなで
「よーしよしよし!」となでながらほめる。現在救助犬の訓練は、ほめながら
ゲーム感覚で身につけさせる方法が主流だときいたが、やはりほめられるたび
なんとなく得意げに見える雁なのであった。わかるなあ。
Yくんと会うのは昨年末以来2度目である。大阪出身で地元も近い。
前回会ったときはまだ研修中だったのに、今日はカヌーガイドをしてきたと
聞いて驚いてしまった。
「すごいね!」と声をかけると「まだまだです」との返事。そのあとで、
「ぼちぼちやる、がんばったらあかん、でも、一生懸命やる…」と
自分に言い聞かせるように力強くつぶやいていた。
何やらぐっと伝わってくるものがあった。

ヤクタネゴヨウマツ
ヤクタネゴヨウの赤ん坊

マメヅタラン
| エコツアーガイド アースリーカンパニーhttp://yakushima.org |
↑Kさんのサイト