屋 久 島 病 の 日 々
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ふかふかの上 (1)
2002年4月21日(日)雨のち晴れ
「ヤッタネ!調査隊」に参加できるはずだった。
絶滅の危機に瀕している固有種「ヤクタネゴヨウマツ」(種子島では
「タネヤクゴヨウマツ?」)の分布や幼樹の確認を含めた生育状況を調査しな
がら、その保護を目的とするグループだ。
ヤクタネゴヨウマツはマツ科マツ属の常緑高木で、台湾の山地に分布する
タカネゴヨウマツと、中国中央部に広く分布するカザンマツの変種とされている。
現在屋久島に1000〜1500本、種子島に100本程しか自生せず、レッドデ
ータブックに「絶滅危惧種」と指定されているらしい。
昨年2月にエコツアーガイドの知人Kさんに案内してもらった、西部林道
沿い照葉樹の山にあるヤクタネゴヨウの大木は、心に残っていた。
今もそうだが、当時は輪をかけて体力的な余裕がなく、自分から
「ヤクタネゴヨウの大木がみたいです!」などとリクエストしておきながら、
登山道を行かない山歩きにゾンビ化してしまったのを苦々しく覚えている。
それでも、楽しい山歩きだった。当時見せてもらった大木は、寒風を受け、
ひとりぽっちでどっしり立っていた。幹の堅さは、「寄せ付けない強さ」を連想
させたが、結局その性質が乱伐の対象となってしまった。
前日の夜、調査隊早朝の集合に備えて、カラオケの余韻を振り切り、
ふだん旅先ではしない目覚ましセットもして、鼻息荒く床につく前に
携帯が鳴った。
今回誘ってもらったKさんからだ。む、イヤーな予感。
そして予感的中。
「明日は雨予報のため中止になってしまいました」
そ、そんなぁ・・・力が抜ける。
でも、せっかくだからということで、どこかに連れて行ってはもらえそうだ。
とりあえず午前中適当な時刻にKさん宅を訪ねる旨を伝え、電話を切る。
結局その夜はHPの掲示板に投稿したり、日記を書いたりと、うだうだ
夜更かしをしてしまった。
翌朝は小雨が降ったりやんだり。外に出るとまた甘やかな匂いに
包まれた。ゆとりができた時間をゆっくり過ごしてから、午前10時に
Kさん家を訪ねる。さらにそこで話をしながらゆったりとした時間を過ごす。
4歳の倭賢くんだけはいろいろな「企て」に余念がない。恥ずかしげに、
自慢のおもちゃやぬいぐるみを次々と目の前に運んでくれる。
前回(2月)に会ったときはもっと屈託がなかった気がするが、少しずつ
おとなになってきているということなのかな?
ゼスチャーを交えたはにかみ具合が、妙に「わかる」のだ。
せっかく用意してもらったお弁当も、居間で話を伺いながらいただくことに
なってしまった。が、このおうちは林の中にあるので、居ながらにして
ピクニックのようでもある。窓の外には木々が茂り、沢の水音が聞こえてくる。
楽しいのであっという間に時間は過ぎていく。
お腹がいっぱいになったところで出発することに。やはりヤクタネゴヨウ
を見に行くことになり、生息する高平か平内のうち後者を選んだ。
ヤクタネゴヨウはこのほか西部林道沿いの山あたりにしかない。
なぜこの三地区にしかないのか、なぜ「そこ」なのか、よくわからないらしい。
ミステリアスな木なのだ。
平内に破沙岳という前岳がある。さらにその前岳とでも言おうか、
そんな名もなき山に入った。救助犬訓練中の雁(かり)も一緒だ。
午後になり雨も上がっていたのに、いざ出発の直前になって
急にざーざー降り出した。あわてて車の中でカッパを着込んでいる私を
よそに、さっさと準備をして雨の中で平然と待ってくれるKさんであった。
やっとほんとに出発。一歩入ると木々の葉が屋根を作ってくれて、ほとんど
濡れない。実際雨足も弱くなったようである。やれやれ。
人があまり入らない山は、枯れ葉が積もっていて、ふかふかだ。
踏み出すたび心地よい感触に足が喜ぶ。ふか、ふか、ふか…。
・・・やはりすぐ息切れする。運動不足が如実に出るなぁ。遠くなっていく
Kさんの背中を見送りながらぜいぜいとゆっくり登る。Kさんはときどき止ま
っては雁の訓練をしながら待っていてくれる。
照葉樹林は雨も手伝って、新緑は深呼吸しているかのように輝きを放って
いる。頭上でウグイスが警戒して短く鳴く。もちろん他に人はいない。
私の荒い呼吸音だけが何だかじゃまっけに響く。
でも、息切れも、山の空気をたくさん体に送り込んでいると思うと
ちょっとだけ嬉しい。(ちょっとだけ)
サルスベリの大木があると聞き、回り道してもらう。下りでは、足を踏み出す
と落ち葉が一緒に動いて、歩幅が少し広がりスピードアップできる。
調子に乗ると長い下りでは滑って転びやすくなるのが難点だが、案外楽しい。
それにしてもやはり至る所に岩がある。それゆえ標高が低くても屋久島の
山歩きはしんどいのだが、岩をエイエイと越えていくのが私はけっこう好きだ。
サルスベリの大木は、遠目からでもオレンジ色の木肌が緑の中で目立った。
近付いてみると
「ほんとうにこれ、サルスベリ?」ってな大きさだ。2本の木がくっついて
1本になっているようで、ちょっと納得したが、その1本分もでかいぞ。
触わるとつるっとした感じもあるが、ごつごつと手に当たる感触が勝る。
花が咲くころどんなだろう?静かな森でひっそりと花を咲かせている大木を
見てみたい。
雁も一緒に、にわか撮影会となった。Kさんもカメラを取り出してきて
写真に収めている。
サルスベリの木は悠然と私たちを見守っていた。
(続く)
サルスベリの大木と雁

遠くからでも目に入る
| ヤッタネ!調査隊 http://yakushima.org/yattane.htm |