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愛子岳 

2001年12月16日(日) 晴れのちくもり

 一昨夜の旅の準備と夕べの星見のおかげで、やはり朝はつらかった。
でも、窓の外では海がきらきら光っている。晴れた。愛子岳だ。
スイッチがオンになる。
 
 
 一応テントを持ってきてはいた。が、ぎりぎりまで迷っていた。
 今年の締めくくりに山に泊まりたかった。
屋久島でも標高の低い「前岳」と呼ばれる山々に登りたいと思ったきっかけは、
「集落の明かりがちらちら見える前岳もいいものだ」と、耳にしたことにあった。
去年の8月の話だ。その言葉を温めるうち、
屋久島で生活する人々を見守る山に、あるいは人々がいつも見上げる山に、
入りたいと思った。
 愛子岳は島内では比較的天候の安定しない北寄りの地域にある。
この時期天気が崩れれば眺望は望めない。
ましてやテント泊は私の力量では難しいかもしれない。
また一方で、逆に島の南側に座するモッチョム岳に登りたい気持ちもあった。
こちらなら愛子岳ほど天候に左右されないかもしれない。
もしかしたら、山泊も可能ではないか?
でもでも、雪を頂いた奥岳を拝める愛子岳も魅力的だし・・・。
・・・決められない。優柔不断な頭の中で、自問自答が果てしなーくくり返される。
しょうがないからこうした。
「晴れたら愛子、くもりならモッチョム。」

 
 朝食後、デイパックに荷物を詰めて、出かけた。
自動的に今回はテントを使わないことも決まった。
車を走らせていると、朝日が差し込んでくる。
よっしゃよっしゃと思っていたが、案の定、
登山口近くまで来ると、少しくもってきた。
でももうあまり気にならなかったが。
 
 きのう下見に来たときには、登山口付近に1台だけ
登山者のものとおぼしき乗用車が泊まっていた。
今日はいない。午前8時30分に登山道に入った。
 
 雲はまだ広がっていないようで、森に柔らかな光が差し込んでくる。
マンリョウの赤い実とリュウキュウルリミノキのトルコブルーの実が
ドロップのようでかわいらしい。ヒメシャラの赤い木肌が目に飛び込んでくる。
時々すべすべの幹に頬をつけ、クールダウンしながら歩く。
さわやかな森が続いた。チェーンソーの音や空港発着のプロペラ機の音が
時折聞こえてくる。やはり、この山は人間の暮らしと深くつながっているような
感覚を強く覚える。人を受け入れることをよしとする優しさすら感じる。
そんな勝手な思い込みとともに、歩を進めた。

 普段から山に登っているわけではないので余計に感じることかもしれないが、
登り始めはいつもきつい。余分な力が入るのか、足が重く、呼吸も乱れがちになる。
足の裏に意識を集中し、地面を感じながら歩くとうまくリズムに乗れることもあるが、
改善されないときの方が多い。しかし、しばらく経ってふと気がつくと、
足が腿から楽に上がるようになっている。余分な力が抜けて、
筋力が過不足なく登りに転化される状態が生まれる。
今回は1時間半ほど歩いて、ようやくその状態を得た。やれやれ。

 しかし、緩やかながら、登りばかりが続く。
いやはや、宿泊用の重い装備でなくてよかったとひとりごつ。
唯一の水場で喉を潤した後はだんだん道がごろごろしてきだした。
あたりはもやが立ち込めている。
最後の露岩ではもはや犬状態(息荒く四つ足)となり、
楽しくひとふんばりして、頂上に出た。

 でたよ。奥岳。「ウェルカム眺望」だ。午前11時40分。
ありがたいことに雲が動いた。眼前、雪を頂く宮之浦岳が迎えてくれた。
しばらくするとまた、白雲に頂は覆われていった。
嬉しくなって、友人たちに山頂からメールを送った。
車を借りているレンタカー会社は同じ地域にあるので連絡してみたら、
「うっそー、下からは雲がかかってて(愛子岳の)山頂は見えないよー。」とのことだった。
標高は1235mだけど、嬉しい。

 後にもう一度晴れて、奥岳が顔を見せてくれた。
カメラには収めたが、それを背景にした
自分自身の記念撮影まではできなかった。
ま、いいや。
山頂は太陽が近くて風もあまり吹かず、案外暖かだった。
ゆったりとした気分でお湯を沸かして、
いざカップラーメンにとりかかる。
…箸がない…。
宿に忘れてきてしまった。でも、実はよくやる失敗なのだった。
慌てず騒がず、周辺の比較的まっすぐな小枝を拝借。
ナイフで削って事なきを得る。ふ。
そして、ふたたびラーメンにとりかかった。
月並みなことをほざくようであるが、
なぜ山で食べるカップ麺はこんなにおいしいのだろう?
コンビニで買った菓子パンとコーヒーもとびきりだった。
これも山のなせる技。

 午後1時20分に下山開始。下りの方が長く感じた。
道が粘土質なので、靴底に付着して滑りやすい。
その靴で露岩を下っていくのにびびり、
モデルタイムより遅れて登山口に到着。
午後4時30分。

帰りにはまたまたNAVIに寄って、スパ王やカップラーメンをもらう。
尾之間温泉のあっつーい湯につかり、真っ暗な宿に帰って
さっそくスパ王ついばみつつ缶ビール飲んだら、
すぐさま眠りの世界に引き込まれてしまった。
明日の天気予報、当初くもりだったのが、雨に変わっていた。


(まだつづきます)

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愛子岳登山道にて   山頂より奥岳を望む